私の好きな名木田恵子さんの、高学年以上向け児童文学です。
もう、本当にマジで感動。
初めて読む人も、読んでよかったって思ってもらえると思うのですが、私が中学生の頃に好きだった名木田さんの作風がそのまま反映されていたので、タイムトリップしたような感じになって、大感激。

　名木田先生は当時、コバルト文庫で、ジュニア向け小説を書いていたのですが、内容はちょっとだけ大人びていました。
　心中未遂したり、ゲイの美少年が出てきたり。

　でも、当時の思春期の子も、今の子も、行動や風景、使っている道具（携帯電話）とかは違うけれど、もがき苦しんでいる姿は同じ。
その苦しみや葛藤を名木田先生は、ちゃんと捉えて確かな筆力で描いていました。

　おいくつになられたのかな。いつまでも鈍らない感受性に、尊敬してしまいます。
ストーリーは、両親はキャリアの共働き。絵亜（エア）はいつも孤独。小学校の４年生から家出したいと思っていて、ようやく１４歳で家出をしました。
　家出少女たちが集まるシェルターと呼ばれるマンションに、逃げ込んだエア。そこで出会った少年との初恋と、その少年を好きな、大麻中毒の少女。エアをかばって怪我をする元小学校の同級生。

　今時の援助交際などの実態も絡めながら、エアの自立と成長が描かれています。
　中篇なので、すごく書き込みがある訳ではなく、あくまで家出した５日間がメインの小説。
　
　でも、ラストに、心地よい感動が。

　エアに希望と、愛が感じられて良かったです。

　昔からの作家さんなので、話題性は少ないかもしれませんが、最近人気のヤングアダルト作家さんの作品と、決して引けをとらないと思います。

　恋の経緯の部分は、ちょっとだけ少女漫画っぽく、綺麗な展開ですが、それはそれで◎とさせてください！